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『異国の客』・・・あーん、フランス住みたい!

異国の客 (集英社文庫)『異国の客』 池澤夏樹(集英社文庫)
2009年8月31日読了


忙しさにかまけて、ちっとも読書録を更新していなかった昨今です。なんせ、本当に忙しい。まーいーにーち、まーいーにーち、僕らは鉄板の上、もとい、四角い箱の中。毎朝10時から時には0時まで、四角い箱の中。どうよ?こんなの、人間のすることじゃない。もっと私は文化的で優雅な生活が送りたい。9時5時ライフはどこにあるの?

そんな私があこがれるのは、村上春樹のような小説家。いやいや、決して彼のような小説が書きたいとか、彼のように有名になりたいとか、そんなことではなくて、そのライフスタイルにあこがれるのございます。小説書くなんて、どこでもできるちゃできる。ギリシャ、アメリカ、日本の各地、転々としながら、仕事(小説書き)しながら、現地の生活をエッセイでおおくりします、(そしてそれも収入になります。)なんて生活がしたいのです。

つまり、ひとところに留まるのがいや。色んな文化を見たいし、知りたいし、内部に飛び込んで把握してから判断したい。小さい頃から転勤族で鍛えた私は、知らない土地に行くことには抵抗ない。一所で末長い関係を気付いて行くほうが断然苦手。

そんな私のあこがれの人物が、また一人増えました。池澤夏樹氏。
彼の作品は、小説よりもエッセイのほうが好き。沖縄、ハワイ、いろんな土地へ移住しては、そこに溶け込もうとし、見つめようとする。日本人の視点をもったままに、その土地に住み着いた現地人として。それは、旅行者には持てない視点でもある。うらやましいのである。

今回は、フランス。フランスはフォンテーヌブローという、パリから電車で40分の都会につかず離れずの街。

"環境によって生活を励起されるのではなく、自分の選ぶ速度で生活を決めていきたい。そのためには万事において高密度の都会よりも、希薄なままの田舎のほうが良い。そこを刺激的にする方法は現代ではいくらでもある。"(P.20)

という氏が選んだ街は、彼の視点を借りて語られるに、相当魅力的に映る。地に足がついた生活に見える。
日本人であることを意識しながらも、そこにとらわれずに、EUの中のフランスを、フランスの中のフォンテーヌブローを、見つめ、肯定し、批判し、生活していく。

異国で暮らすこと、あるいは、知らない土地へ移住すること、とはすなわち、観察者の目を持つこと、なのかなと思う。どこか知らない土地に入ると、いやおうなしに観察者の目になる。世界がフレームを通して見えるのだ。言葉がフィルターを通して聞こえるのだ。そういう体験は、いつだって新鮮で、自分が一度リセットされる感じ。だけど、やっぱり私は私で変わっていないことにがっかりする感じ。それでも、ちょっとずつ環境に感化されて変わっていく、そういう生活。

そっか、今の私、観察眼がすっかりなくなってたのか。だいたいこうなるんでしょ、と次が予測できる環境に落ち着いてしまっている!そろそろ東京に飽きてきてるのかもな。次はどこへ行こうかな、なんて。この本を読みながら、(フランス生活にあこがれながら、)次の移住先を探す。
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by yebypawkawoo | 2009-09-02 01:51 | ◆本のこと  

『異邦人』・・・自分に対して誠実で正直であることを、選びとる過程が抜けている。

異邦人 (新潮文庫)『異邦人』 カミュ(新潮文庫)
2008年10月10日読了


あぁ、私は異邦人だなぁと思う。私は、他人に迎合してうまく取りつくろっているだけじゃんと思われるくらいなら、ムルソーのように自分に正直で誠実であることで死刑となるほうを選びたい。ムルソーは何の悪気もなく、自分に対して誠実であるだけで、おそらくそれは他人に対してもそうなんだと思う。あくまで彼の考える誠実、だが。

ママンの死に涙せず、マリイに愛してる?と聞かれ「それは何の意味もないことだが、おそらく愛していないと思われる」と答える。正直なのだ、そして誠実なのだ。それだけだ。

―結局において、ひとが慣れてしまえない考えなんてものはないのだ
―私はこのように生きたが、また別な風にも生きられるだろう


この一歩退いた視点と、達観したかのような態度が、おそらく周りの人々の気に入らないのだ。

真実なんていくつでもあって、物事の破片破片に紛れているものだから、それを取り出して、少し加工し、個々人の価値観に合わせ(るように見せかけ)てやれば、それだけで誰もが安堵するのに。ムルソーはそれをしない。それをしようという発想がそもそもない。たぶん、面倒くさいんだ。それをすることに、常人以上に労力を使う人なのだ、たぶん。真実はわずかな一片だけを取り出せば、偽りになる。みんな、自分の好きなように解釈するから。消極的な嘘。だけど綿は、それで作られた幻影の私を、自分の中に見られるのは嫌だ。だから、積極的にあえて何も言わない、そういう選択肢だってある。

人は、解釈できない事実を突きつけられると混乱し、嫌な気分になるので、蓋をする。そういう厭らしさって、たぶん誰でも少しはもっている気がする。ムルソーのように蓋をされる道を選ぶということは、絶望でも無気力でもない。積極的に正直なのだと思う。

だけど、彼は非常に独りよがりでもある。ここまで、自己完結してしまうと、他人の入る余地がない。だから、周囲の視点に立つと非常に寂しく感じる。結局ムルソーは、自己中なんだ。自分に誠実だけれど、他人に対して誠実ではない。今度は、他人の視点から見る誠実。あそっか、つまり私もそういうことか。

他人がどう考えるかということを常に念頭に置き意識した上で選択したムルソーの行動とは思えない。そこが、私が唯一彼に対し、残念ね、と思う点(他人に対しては客観的になれる)。どこまでいっても、例え最終日に大勢の見物人が憎悪を持って彼を迎えたとしても、自分の視点のうちにとどまっている限り、あなたはきっと孤独だよ、ムルソー。
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by yebypawkawoo | 2008-10-15 23:50 | ◆本のこと  

『好き好き大好き超愛してる。』

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫 ま 49-6)
『好き好き大好き超愛してる。』 舞城王太郎(講談社文庫)
2008年6月18日読了

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by yebypawkawoo | 2008-06-18 16:15 | ◆本のこと  

『ウォーターランド』・・・この一冊に何人もの人生が詰まっている。


『ウォーターランド』 グレアム・スウィフト(新潮クレスト・ブックス)
2008年5月25日読了


すんばらしい。この1冊の本の中には、何人もの人の人生が詰まっている。何人もの人の、生きる上での苦悩、人生における選択、葛藤、諦め、継続、青春、そういうものがずっしりと詰まっている。それだけではなくて、ミステリーとしての面白さえも併せ持っている。これはすごい。

話は、もう50うん歳を迎えることとなった歴史教師、トム・クリックが彼の生徒たちに語りかける形をとる。彼は、「子供たちよ(Children)、」と言い話し始める。彼の故郷の歴史を。彼の祖先の生きざまを。彼の父親の、母親の、兄の話を。それはそのまま、彼自身の人生を形作っているから。

私がいま、ここに、こうやって存在しているその前には、何人もの人の生きた人生があり、理由がある。私がいま、ここに、こうやって存在しているその周りには、何人もの人の生きている人生があり、行動があり、その理由がある。そのどれもが当り前ではなく、そのどれもが一つ一つ意味を持っているのだということ。そういうピースの破片のようなひとつひとつで、私が出来上がっているのだということ。ものすごく壮大で、なんだろう、ひとつひとつのちっぽけな事象が連なって宇宙まで続いていくようなそういう世界観が目の前に広がった。

歴史は、変わらない。しかし、歴史は、私をつくって来た。ある種の必然性を持って。未来は、変えられる。「いま、ここ」は一つではない。今この一瞬の私の選択が、無数の未来を創り得る。この小説はそういうことを教えてくれる。でも、違うそうじゃない。それだけではなくて、もっと繊細ではかない人の心の動きを、そういうものの大切さをも教えてくれる。ひどくマクロで、ひどくミクロな、そういう小説だ。
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by yebypawkawoo | 2008-06-06 21:05 | ◆本のこと  

『アメリカにいる、きみ』・・・経験者にしか語れない真実と、一歩引いた視点の有様

『アメリカにいる、きみ』 チママンダ・ンゴズイ・アディーチェ(河出書房新社)
2008年5月13日読了

アメリカにいる、きみ (Modern&Classic) (Modern&Classic)

すばらしい。訳者に感謝である。

最近、アメリカ社会で暮らす異文化を背景とした人物の話を読む機会が多い。インド系アメリカ人のことを書いたジュンパ・ラヒリ然り、本作の作者C・N・アディーチェ然り。そういう視点は私にとっては新鮮で、映画同様、世界における私にはなかった異なる視点、を提供してくれる。

日本は、ある程度大きな国家になってしまっているし、世界的に見ても相対的に非常に豊かな暮らしを送っている、皆が。けれど先述の彼女たちには自分のアイデンティティの大元に、貧困・飢餓・戦争、そういったものが現実として存在していて、それがアメリカという国家との比較の中で際立って見えてくる。何かの象徴としての、アメリカ。やはり、アメリカは強大な国家である。その影響力、存在感、そういう部分において。

今の日本人には決してかけない話だと思う。戦争とか、民族間の争いとか、そういうものが、主観的になり過ぎない一歩引いた視点で、けれど実をもって描かれている。その筆力も、すばらしいと思う。宗教をもたない、民族紛争をわかりえない私には、実感しきれない部分もおおいけれど、けれどそこを背景とした主人公の虚脱感やら、宗教に対するどこかさめた視線であったり、そういうものは共感できるところもあり、だからこそ、同じ人間であることをシンと感じる。シンシンと。

彼女の長編『パープル・ハイビスカス(Purple Hibiscus)』『半分のぼった黄色い太陽(Harf of a Yellow Sun)』も、ぜひとも読みたい。訳が待たれます。
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by yebypawkawoo | 2008-05-13 15:00 | ◆本のこと  

『観光(Sightseeing)』・・・訪れられる側からの視点

『観光(Sightseeing)』 ラッタウット・ラープチャルーンサップ(早川書房)
2007年5月20日読了

観光(ハヤカワepiブック・プラネット) (ハヤカワepi ブック・プラネット)

タイ系アメリカ人の著者が、タイを舞台にした様々な日常生活を、タイ人の視点から書いた物語。

タイの情景が色鮮やかに目の前に広がって、観光客(裕福な日本人としての)の視点でしか見ることの出来ない私に、ある意味で訪れられる側からの視点を提供してくれる。その裏で巻き起こる数々の物語を、知る(知ったつもり)になることができる。そして南国のむわっとしたあの感じがよみがえる。

どこか懐かしく感じるのは、そんなに遠くない昔、日本もきっと同じような日常があったからで、それがいつの間にこんなところに来てしまったのか、それとも東京という超BIG CITYにいるから、その感覚がより顕著に明確になるのか、それも一部ではあるのだろうけれど、そう遠くない将来、タイやその他東南アジア諸国が、日本のようになってしまうのだとしたら、それは果てしなく悲しく切ないと、わたしは思う。

国際協力関係の職につく友人と、インドネシアを回る際にそのような話になり、国際協力が日本をコピーし量産するシステムなのだとしたら、私はそんなのは嫌だと、そういったところ、
―それは日本人のエゴだ。この国に住む彼らにしてみれば、もっと経済発展をと願っているし、もっと利便性の高い暮らしをしたいと願っているのだから―
と、彼はそうこたえたのだけど、そしてそれはよくわかる(いや、わかったつもりになっているだけかもしれないが)のだけれども、日本で平均イーブン、あるいはベターの暮らしはしているだろう、私の生活を鑑みた上でも、それでも私は思う。日本を量産するのは違うんじゃないの?と。経済発展が間違っているといっているわけではない。

南国はものすごく色鮮やかで、鮮烈で、まぶしい。次から次に押し寄せてくる感じ。その激しさをベースにしたやさしさに、安心する。
日本はもっと穏やかで、淡く繊細だ。
文化や生活には、その土地の気候が、大きくかかわっているのだと実感した。
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by yebypawkawoo | 2007-05-22 15:02 | ◆本のこと  

『ホノルル、ブラジル―熱帯作文集』

『ホノルル、ブラジル―熱帯作文集』 菅啓次郎(インスプリクト)
ホノルル、ブラジル―熱帯作文集

私はどへ行くにも、本を持ち歩いていて、
先日バリへ旅行に行った際もっていったのは、この本ともう一冊。

結局、旅先ではほとんど読むことはなかったのだけど、帰国する飛行機の中、バスの中、家に帰ってからも読みすすめていくにつれ、自分の経験とあいまって、そうそうと頷く、もとい、再認識させられる事がとても多く。

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 ・全体は誰にも見通せない。 逆にいうと、あらかじめ与えられた「美」を
  「これが美なんだ」と信じこむ人は、結局、美しさに出会えずに終わる。
  美はあくまでも自分の経験として発見されるもの、
  発見しなくてはならないものでしょう。旅先でも、日常生活でも。

 ・世界のほとんどすべての街は、ひとりの人間の生涯にとって、
  ただ名前としてはじまり、名前として終わる。
  イスタンブールもブラザビルも、ダッカもレイキャビクもテグシガルパも、
  あるいはカブールやエレサレムも、・・・。

 ・ある傘の下にいるかぎり、その傘の存在は疑いの対象にもならないし、
  するとそれが世界そのものみたいに思ってしまう。

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この本は、著者が
「たぶんこれまででもっともamiableな(愛想のいい)本になったと思う」
とかいているとおり、読みやすく、でも色んな情景が目に浮かんで。

帰ってきたばっかりなのに、またどこかへ行きたくなった。
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by yebypawkawoo | 2007-05-05 23:06 | ◆本のこと