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『アメリカにいる、きみ』・・・経験者にしか語れない真実と、一歩引いた視点の有様

『アメリカにいる、きみ』 チママンダ・ンゴズイ・アディーチェ(河出書房新社)
2008年5月13日読了

アメリカにいる、きみ (Modern&Classic) (Modern&Classic)

すばらしい。訳者に感謝である。

最近、アメリカ社会で暮らす異文化を背景とした人物の話を読む機会が多い。インド系アメリカ人のことを書いたジュンパ・ラヒリ然り、本作の作者C・N・アディーチェ然り。そういう視点は私にとっては新鮮で、映画同様、世界における私にはなかった異なる視点、を提供してくれる。

日本は、ある程度大きな国家になってしまっているし、世界的に見ても相対的に非常に豊かな暮らしを送っている、皆が。けれど先述の彼女たちには自分のアイデンティティの大元に、貧困・飢餓・戦争、そういったものが現実として存在していて、それがアメリカという国家との比較の中で際立って見えてくる。何かの象徴としての、アメリカ。やはり、アメリカは強大な国家である。その影響力、存在感、そういう部分において。

今の日本人には決してかけない話だと思う。戦争とか、民族間の争いとか、そういうものが、主観的になり過ぎない一歩引いた視点で、けれど実をもって描かれている。その筆力も、すばらしいと思う。宗教をもたない、民族紛争をわかりえない私には、実感しきれない部分もおおいけれど、けれどそこを背景とした主人公の虚脱感やら、宗教に対するどこかさめた視線であったり、そういうものは共感できるところもあり、だからこそ、同じ人間であることをシンと感じる。シンシンと。

彼女の長編『パープル・ハイビスカス(Purple Hibiscus)』『半分のぼった黄色い太陽(Harf of a Yellow Sun)』も、ぜひとも読みたい。訳が待たれます。

by yebypawkawoo | 2008-05-13 15:00 | ◆本のこと  

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