『停電の夜に』・・・違和感って日常にあふれてると思う

『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ(新潮文庫)
2008/3/26読了

停電の夜に (新潮文庫)

ラヒリの作品は、『その名にちなんで』を読んだのが最初。
それがあまりに面白くて、それで短編集である本作をすぐに入手した。

ラヒリの文章は、人物の心情を具体的に描くことが少ないように思う。それよりも、各々の仕草であるとか、ふと思ったこと何かの描写にたけている。その一つ一つが、側面から各々の胸の内を浮かび上がらせる。映画を見ているような文章。本当にうまい。小川高義さんの訳もうまいんだろうな。

ラヒリ自身がインド系アメリカ人(確か)であることもあり、アメリカに身を置くインド人、あるいはその2世なんかが主人公になることが多い。その普段の暮らしの中で感じる少しの違和感を描き出すのがうまい。

わたしは、昔からアイデンティティに疑問をいだく、というところを出発点とするような話、作品が好きだ。イサム・ノグチの作品もそうだし、カズオ・イシグロの小説もそう。それは、自分が転校生だったことも少なからず関係しているんだろう。そのちょっとした違和感って、でも普通に日本人として日本で暮らす私の日常にもあふれている。それをどう処理していくのか。そういう部分で感じることの多い作品だった。

訳者もあとがきで、こう述べている。
何かしらの異なるものに触れたとき、それをどうにか自分のわかるようなものに解釈しようとする試みが、作品の随所で行われている。


一方で、彼女の作品は結婚をテーマにしたものが多く、作品を通じて感じられる彼女の結婚観には、いまいち共感できない。もう少し、歳をとって、たとえば30代になったとき、たとえば結婚後で、読むとまた違った感想を抱くのかもしれない。
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by yebypawkawoo | 2008-03-27 22:38 | ◆本のこと  

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